4.気管切開、胃ろうによる親御さんの負担

2008/02/19 (火) 17:02 | 質問に対する回答

 気切や胃ろう、鼻チューブによって、本人さんの生活が楽になることは理解できたのですが、親御さんの負担はどうなのでしょうか?(給食時間に学校へ行かないといけない、定時的に学校へ吸引へ出向く必要があるetc.)親御さんの負担を軽減するために、今回のセミナーがあるかと思いますが、今の現状では、なかなか、親御さんに「気切…いいですよ」「胃ろうは楽ですよ」とは勧められません。さまざまなことを考えさせられる研修となりました。

<答>
 基本的に気切をしなければならない状況は、口鼻腔吸引が必要なはずであり、親御さんの負担には変わりはないはずです。また、胃ろうについても、すでに鼻チューブで栄養管理をされている方に行われるものですので、親御さんの負担は変わらないはずです。
 口鼻腔吸引をしていなくてもすんでいた方に医療的ケアである口鼻腔吸引を導入する場合には、看護師または教員による医療的ケアが毎日割り当てられていない都道府県では、親御さんの負担は増すように思います。しかし実は、重大な問題を含んでいます。口鼻腔吸引が必要になっている方に吸引をせずに、教員が姿勢管理やティッシュなどで口の中の痰を取り除いているのは、非常なリスクを秘めた状態です。保護者でない教員がこのリスクのある行為を行って事故が起こった場合、教員の責任が問われることになります。
 また、経口摂取している方に医療的ケアである鼻チューブ導入する場合も、看護師または教員による医療的ケアが毎日割り当てられていない都道府県では、親御さんの負担は増すように思います。しかし、実は重大な問題を含んでいます。摂食・嚥下障害が重篤になっている方に、経口摂取を行うことは非常なリスクを秘めた行為なのです。
 実際は、保護者でない教員がこのリスクのある行為を行って事故が起こった場合、教員の責任が問われることになってしまいます。医師が、患者さんの状況について、口鼻腔吸引が必要、鼻チューブによる経管栄養が必要と判断した時点で、本来は直ちに医療的ケアを導入し、学校でのリスクを軽減しなければなりません。現状では、保護者が医療的ケア導入を納得されるまでの期間は、リスクを負って教員が医療的ケアなしで、排痰行為、食事介助を行ってくれています。しかし、事故があった場合の責任は、教員が負うことになってしまいます。保護者は医療的ケアを受けることに納得できないのならば、保護者が自分でそのケアを行わなければならないのです。
 本来、医師が患者さんを、口鼻腔吸引が必要、鼻チューブによる経管栄養と診断した時点で、医療的ケアを開始できる体制が必要です。保護者の負担が増えるから、医療的ケアを申請しないという事態は、現実に日本中で起きていることですが、教員の献身的な行為に支えられているにすぎません。
              豊田こども発達センター小児神経科 三浦清邦

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